「STAY MY LOVE」 BYゆの


(ん・・・?)
ふっと高耶が目を開けると辺りが暗かった。
(直江?)
目を開けると反射的にいつも側にある存在を求めるが、壁にかかっている時計が目に入って、まだ夕方の6時だということを知る。
最近仕事が定時きっかりに上がれない直江は、まだ帰ってこない。
「寒・・」
あと1時間帰ってこねーな。と思いながら身体を起こす。
こたつで寝るのは風邪を引くから嫌だったのに、気持ちがよくていつのまにか眠っていたらしい。
(夕飯・・・作んなきゃ・・)
外は寒いだろうから暖かいものにしよう。そう思って献立を考える。
(ん〜・・何がいっかな・・・)

「・・早く帰りたい」
「?・・何か意見があるのか?」
ついつい長いだけの会議に嫌気がさして呟いてしまったらしい。
耳ざとく聞きつけた兄に意見を求められてしまった。
「いえ、何でもありませんが・・。そうですね、ちょっと今日は後がつかえてますし、これ以上考えても良い案が出そうもないのでこれでやめにしませんか?」
周りの上役達もいい加減飽きてきていたのだろう、直江の意見に拍手喝采を浴びせんばかりの目でなりゆきを見つめている。
そんな空気を感じ取ったのか照弘は、それならとりあえず明日に延期ということにしよう。と会議を打ち切った。
直江は、手早く会議に使っていた書類をまとめ会議室を出た。
一旦自分のデスクに戻ると、鞄を携えて足早に地下の駐車場に向う。
軽くエンジン音を確認した後に、時計をチラ・・と見遣る。
午後6時。今頃愛しいあの人は夕飯の支度でもしている頃だろうか。
(その前に・・・)
と、直江は車を家と逆の方向へ走らせた。

外、寒そうだな・・とカーテンを閉めながら窓の外を一瞬眺めて思う。
はっきりとした青い色のカーテン。
高耶がこのリビングの中で気に入ってるものの一つだ。
部屋の明かりを勢いよく反射させて、よりリビングを明るく見せる。
本当は、冬になった時に直江が「深碧色のカーテンに変えませんか?」と持ちかけた
のだけれど、高耶はこのくっきりとした中にある青の暖かさが好きで変える気にならなかった。
抜けるような青空の色。
真夏の太陽を浴びてその青空の下でヒマワリが背を伸ばして一生懸命咲いてるような、そんな情景を思い起こさせる色。
透き通るような、どこまでもどこまでも広がる青い海の色。
冬なのにそんな夏の光景を思い浮かべては笑みが零れるのは、自分が夏生まれだからだろうか。
(ヤバ・・)
時間を気にして時計を振り返る。
考え事をしている場合じゃない。時間がないことをすっかり忘れていた。
寒いから暖かいもの・・・鍋・・・?シチュー?
そこまで考えてハタと気づく。
(直江の好きなものは何だろう・・・)
あの自分を喜ばせることが好きな恋人は、 きっと今頃自分に贈るプレゼントを買ってるに違いない。
(好きな物、好きな物・・・・)
でも・・・あいつは、自分が作ったものだったら何でも喜んでくれるんじゃないか・・。とそう思って、シチューを選択する。
「だって直江の好きな物なんか聞いたことねーもんなっ。俺の食べたいもの作って何が悪い。」
自分の考えたことが妙に気恥ずかしくなって、高耶はそう、一人呟いた。

(この辺りでいいか・・)
歩道側に車を寄せて止め、ハザードを出す。
直江の視線はすぐ側の花屋に向けられている。
何かの折につけて花を贈っていた直江に高耶は、「すぐ枯れんだから、花なんていらねーよっ」と言っていた。
けれどそう言いながら、食事中でも、掃除していてもくつろいでいても・・、ふとした時に笑顔になって花を愛でていたりする。
自分がプレゼントしたものに、高耶から静かに注がれる愛情。
それを知るたびに癒される。
他の誰でもない自分から贈ったものだからこそ、高耶から注がれる愛情・・・。
そう思うのは驕りすぎかもしれないけれど・・そう思っていたい。
花を眺めて、高耶の姿を思い描く。
(今日は何を贈ろう)
はっきり言って、この男が花屋で花を選んでる行為事態が目立っていたりするのだが、本人は気にしていないようだった。
さまざまな好奇の目を浴びながら、『なでしこ』と『カスミソウ』を選ぶ。
花言葉なんて大して気にしていなかったけれど、高耶に花を贈るようになって気にするようになった。
高耶には気づいてもらえなくてもいい。自分だけが知っていればいいから――
数の多い花びらでふわっとしていて、明るい雰囲気のある花だ。
紫を中心に一通りの色を揃える。
『カスミソウ』の花言葉は「喜び」。
そして、『なでしこ』は「燃える愛」――――

車に戻って今度こそ家の方向へと走らせる。
途中ですっかり常連と化したワインショップへ寄り、今日のためのワインを選ぶ。
高耶のために口当たりのいいものを購入する。
飲みやすいからといって、あんまり飲ませすぎないようにしないとな。と考えて苦笑する。
何を見ても考えても、心に想い浮かぶのはただ一人だけ。
その幸せに心地よい陶酔感を覚える。
朝、『7時には帰ります。』そう言った自分を期待をこめた目で見ていた高耶。
最近ずっと遅かったから・・・・寂しい想いをさせていただろう。
早く帰って笑顔を見たい。
そう、はやる気持ちのままに直江は車を家へと走らせた。

(よしっ。こんなもんか。)
直江の好きそうで、暖かいもの・・と考慮した夕食をとりあえず皿に盛る。
ちょっと腕を振るったから、その料理の数はちょっとしたディナー並みだ。
時計を見ると7時ジャスト。
『7時に帰る。』と宣言した直江だ。
電話もなかったし、さっきのニュースで道路も混んでないと言っていたから、
予告通りにもう少ししたら帰ってくるだろう。
テーブルの上に皿を置き終えた高耶は、リビングを出て玄関へと向う。
パチッ。と音をさせて明かりを点ける。
帰ってきたときに暖かい光の中で迎えられるように――

唐突に、本当に突然、どうしようもなく高耶の中で『好き』の気持ちが溢れ出す。
(好きだよ、直江。だから早く帰って来い)

マンションの地下駐車場で、自分に割り当てられた場所に車を止める。
エンジンを切ると途端に辺りが静かになる。
腕時計を見ると7時になろうとしているところだった。
どんな顔をして迎えてくれるのだろう。
顔を見たらなんて言おうか・・。
そんなことを考えて自然と暖かい気持ちになる。
高耶の元に帰るまであと少し。

ドアを開けると高耶が音で気づいたのか、リビングとを仕切るドアから顔を出した。


ようやく戻ってきた愛しい空間。
一人では感じられない、優しくて甘い空気。
「高耶さん、ただいま。」
そう言って笑いかけると高耶も笑顔で返してくる。
「お帰り、直江。」
少なくても、一言一言が大切で愛しい言葉になる。
抱きしめて、存在を確かめて。
引き寄せられて、小さく唇にキスをした――


「愛する」ことって、どんなに辛くても悲しくても
相手の全てを受け入れること。
相手の全てを感じること。
全てを認めるには努力も勇気も必要だけど。
とりあえず今、この存在が側にあることに感謝しよう―――
そんな記念日の一日。


この愛がずっと側にありますように。

     ――『やすらぎに 永遠とわを願う    Stay my love』――

**END** 


すみません;;自サイトでUPしたのと全く同じです。。。でもあまりに私のが少なすぎて、何かUPしないと;;と焦って転載です(汗)
最後の一節はaccessの「STAY MY LOVE」から取らせてもらいました。
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