「Morning Battle」 BY真波さん



ほんわりと暖かい世界。
このまま時間が止まってしまえばいいのに・・・・・
それでもその時は近づいてくる。


リ・・・・・ン


ベッドサイドの時計が最初の音を立てた途端、毛布から手が伸びてぱし、と時計を叩く。
そのまま手の主はむにゅむにゅと何か呟いて、毛布に頭まですっぽりと潜り込んでしまった。
直江は楽しそうに、まるで猫か何かのように朝寝を決め込む恋人を起こしに掛かった。
昨夜、『松本に帰るから早く起きる』と言った彼は、自分でセットした筈の目覚ましを止めてしまった。
しばらく離れてしまうから、とばかりにさんざんに攻め立てて鳴かせたのが良くなかったらしく、あどけない表情ですっかり寝入っている。
こう言う時は下手に起こすと八つ当たりをされる。
しかし起こさなければ彼が怒るのは目に見えている。
折角しばらく離れてしまう前の大事な一時なのに、彼に機嫌を損ねられてはたまったものではない。
直江は高耶の毛布を捲って首から上だけを出し、高耶の艶やかな黒髪に指を絡めた。
そしてゆっくりと梳きながら耳元で囁いた。
「高耶さん、もう朝ですよ?」


それに対する高耶の返事は、というと。
「・・・・・・・・・」
迷惑気に形の良い眉をひそめ、更に毛布に潜り込んでしまった。


「高耶さん・・・」
直江は呆れ半分、愛しさ半分で呟き、今度は本格的に高耶を起こしに掛かった。
具体的には、高耶が潜っていた毛布を剥ぎ取ってしまい、そして高耶の顎を捉えてディープキスを仕掛けた。
ついでに高耶の鼻をつまんで息が出来ないようにしてしまう。


なんだかいやなおとがした。
それをとめたらなんだかあかるくなってさむくて、やっぱりいやだったからくらくてあったかいとこにもぐった。
そしたらいきができなくなった。
なにか、くちになにかはいってうごいてて・・・・!


「――――――――――っ!」
慌てて暴れ出した高耶を解放し、直江はにっこりと微笑む。
「おはようございます、高耶さん」
しかし、朝っぱらからとんでもない起こし方をされた高耶の機嫌は良い筈も無く、寝起きの機嫌の悪い視線が直江に突き刺さる。
思わずたじろいだ直江を尻目に、高耶はまたもや毛布を引っ張ってかぶり、丸くなってしまった。
もそもそと毛布の塊が形を変えて、どうやら二度寝を決め込むべく楽な態勢を探しているようだ。
「高耶さん、今日は早起きするんじゃなかったんですか?」


すると毛布が返事をした。
「うるせぇ! 朝っぱらからあんな事しやがって・・・」
「起きるんじゃなかったんですか?」
「寝る!」
「松本に帰るんでしょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
毛布の塊は返事をしなくなってしまった。
それどころかすうすうと微かな寝息が聞こえてくるではないか。


「たーかーやーさーん!」
直江は焦れて毛布の山を強く揺さぶる。
が、目覚まし時計と同じような目にあっただけで、高耶は一向に起きようとはしない。
そこで直江は作戦を変える事にした。
毛布の塊と化している高耶を抱き寄せ、自分もさっきまで使っていた毛布をかぶる。
「暑いぞ」
「だったら起きて下さい」
「やだ」
「・・・・・・・・・・・・・」


直江は無言でぎゅうぎゅうと高耶を押しつぶしに掛かった。
「重い」
「起きませんか?」
「やだ」
「どうしたら起きてくれます?」
「寝かせろ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
相当強情な毛布の塊だ。


直江はふう、と溜め息をついてベッドサイドに置いてあった携帯を取り上げた。
毛布に潜っていた高耶の耳に、携帯を操作する小さな音が聞こえてきた。
その後には男の声が続く。
「朝早くから済みません、直江と申しますが仰木さんのお宅でしょうか?・・・・・・・・・おはようございます、美弥さん。お元気そうで何よりです。実は高耶さんがちょっと体調を崩してしまいましてね。そちらに行くのが遅くなりそうなんですよ。・・・・・・・・・・・ええ、昨日の夜は随分と頑張ったようですからね・・・」
毛布越しに聞こえるとんでもない会話に高耶は目を見開いた。
「きさま美弥に何吹き込んでやがる!」
怒りに任せて毛布を跳ね除け、直江の携帯を奪って相手に話し掛ける。
「おい、美弥。まともにあいつの言う事なんか聞く必要ねーぞ!」


だが返ってきたのは無機質な女性の声で流れる天気案内だった。
ぎり、と直江を睨みつける高耶。
直江は全く意に介さずににっこりと笑いかける。
「おはようございます、高耶さん。これで起きないなら本当に美弥さんに電話してしまいますよ?」
「卑怯者!」
「起きないあなたが悪いんです」
「・・・・・・・・・・・・ふん」


直江は完全に拗ねてしまった高耶を、優しく引き寄せた。
そして軽く唇を触れ合わせる。
毎朝恒例の、おはようのキス。
ほんのりと甘いそれに、高耶の機嫌もすっかりとは言わないまでも直っていく。
けれど起こしてくれた礼を言うにはプライドが許さない。
高耶はふい、と横を向いてベッドを下り、パジャマを着替えるために自室に戻った。


しばらくして、また一悶着が起きる事となるのは周知の事実。
今度の原因は、首筋にくっきりと残ったキスマーク。

「てめぇこんな目立つとこにつけるなって何度言ったら解るんだこの色ボケ馬鹿犬がーーーーー!!」

それもまた、彼らにとっては平和な日常の日々である。


おしまい。
 


「寝起きの朝のひとコマvv」です☆
個人的に寝起きの悪い高耶さん、大好きなのですよvv見事にツボにハマった小説でした☆ってゆーか萌えましたvvvただのじゃれ合いにしか見えない二人が幸せでした〜☆真波さん、素敵な小説をどうもありがとうございましたvv
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