「love breeze」 BYゆの


「大丈夫ですか?」

「ん、もう平気。」

春先の寒暖差の激しさについていけず、高耶は風邪を引いて寝込み、直江は嬉々として高耶の看病をしていた。

「・・雪?」

カーテンを開けた直江に、ベッドの上に起き上がって、カップに口をつけながら高耶が問う。

カップの中身は、あまり食欲のない高耶のためにせめて少しでも栄養のあるものを、と直江が作ったポタージュだ。

「残念ながら雨・・・というか、みぞれです。」

「ふーん。寒いから雪かと思った。」

「今日は久しぶりに相当冷え込んでるらしいですよ。暖房の温度、上げましょうか?」

カップを弄びながら、横に首を振る高耶を見て、直江はベッドサイドに戻る。

空になったカップを受け取って、手のひらを高耶の額に当てて熱を計る。

シン・・と静まり返る部屋に、お互いの呼吸する音だけが響いていた。

「熱、少し下がったみたいですね。」

「だろ?だから平気だって言ったじゃん。」

そのまま起き上がろうとした高耶を直江はやんわりと押し留めた。

「だめですよ。風邪は治りかけのときが一番危ないんです。今日一日寝ててください。熱が完全に引いたわけじゃないんですから。」

言いながら高耶をベッドに横たえる。

「お前は・・・?」

直江の方に手を伸ばして聞く。

昨日、直江が寝ていなかったことを高耶は知っている。

熱でうなされる度に直江が目覚めさせてくれていたから・・・・。

「寂しいですか?」

高耶の指に自分の指を絡めながら笑って言うと、高耶はニヤっと笑って、直江をくいっと引っ張った。

あらがわずに片膝をベッドに乗り上げて、高耶の上に覆い被さる。

高耶の頭の横に手をつくと、滑らかで柔らかい髪の感触が掠った。

「どうしたの?」

「髪、梳いて。」

言われるままに梳いてやると気持ち良さそうに高耶が目を閉じた。

どこかその表情に艶やかな色を見て直江が唇を重ねる。


それから少しして、目を開けた高耶がポンポン、と自分の隣を叩いた。

どうやら寝っ転がれ、ということらしい。

することもなく、高耶を眺めながら髪を愛でていた直江がおとなしく従うと、高耶が猫のように擦り寄ってくる。

その身体をぎゅっと抱きしめると、高耶も直江の背に腕を回してきた。

昼間だから、ということもあるけれど・・身体を繋げていなくても、こうして触れ合っているだけで愛しさが募っていく。

お互いの存在に心が癒され、満たされていくのを感じる。

言葉がなくても伝わってくる想い ―――

きっといつでも触れ合っていたいと思うのは、相手の変わらぬ想いを確かめたいから。

幼児が愛情を求めて母親の手を離せないように、彼の想いを感じたくて触れたいと願う。

そうして静かに高耶の想いを感じていたら、いつの間にか高耶は目を閉じていた。

自分の腕の中で穏やかな寝顔を見せる高耶に、ささやかな幸福感を覚える。

「早く良くなってくださいね。」

直江は精一杯の願いをこめて小さく呟いて、高耶の髪に唇を寄せた。

高耶の風邪が治ったら何をしようか。

最近出かけていなかったから、久しぶりに遠出のドライブもいいかもしれないし、高耶の買い物に付き合うのも楽しいだろう。

これから先の予定を考えながら、直江も瞼を下ろす。

今寝たら、高耶の夢が見れそうだった。

脳裏に描き出される高耶の笑顔に口元を緩め、眠りに落ちる直前の一瞬、抱いている高耶を強く抱きしめる。

寝ていても高耶を感じていられますように――


そうして直江もゆっくりと睡魔に身を任せると、柔らかい夕陽が優しく二人の寝顔を照らしていった―――

END 

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