「MY LOVER」 BYAmyさん


だって愛してる。


直江との、念願の同居生活が始まった時。
高耶は最初、直江が自分から離れていってしまうのではないか、とか、
そもそもこんな風に幸せな「今」は、狂ってしまった自分が見ている勝手な夢なのではないだろうかとか、そんな考えに雁字搦めになっていた。
悪夢をみては泣きながら目を覚まし、思いついては恐ろしくて。
だけど。
直江はいつだってそばにいて、その苦悩をそっとそっと溶かしていってくれた。
「愛してますよ」そういって、微笑みをくれて。やさしいキスと、きつい抱擁をくれた。
時には、「怖がっているのは、私だって同じですよ」と、少し恥ずかしそうに、でも真摯な眼差しで告げられ安堵の息を吐きながら。
温かい直江の腕に囲われたまま、二人で変わり行く季節を見つめた。
愛しい時間。
そうして、1年が過ぎ、春が訪れるころ。
高耶のなかにあったあんなに大きな恐怖は、目には見えないくらいに溶け去っていた。
それとともに、あんなに甘え下手だった高耶の態度は少しずつ、
柔らかなものになっていった――――。

*******

(あ・・・直江だ)
せっせと夕食の支度をしていた高耶は、ふと愛しい恋人の帰ってくる気配を感じて手を止め、ぱたぱたと玄関へ向った。案の定がちゃりと開いたドアから直江が入ってきて、高耶は嬉しくなった。
「ただいま帰りました・・・っと、高耶さん?」
「おかえり〜。お疲れさん」
あけた瞬間玄関に高耶がいたのに、直江が驚いた。めったに驚かない直江のその顔を見れた高耶は大満足である。靴を脱いで高耶の方に苦笑しながら覗き込んできた直江に、へへっと笑いながら伸び上がって心得たようにちゅっとお帰りのキスをした。
「私が帰ってくるの、よく分かりましたね」
そんな高耶がかわいくてぎゅううっ!と抱きしめながら、直江はなおも不思議そうだ。
帰る前に「今から帰ります」と電話はしたが、それだって何分に帰ってくるかまでは分からない。
「お前だって俺がどっか出かけて帰ってくっと気配で分かるっつったじゃん」
「そりゃ、他ならぬあなたのことですからね。」
即答である。
それが嬉しくて、そして直江の温もりにもっと触れていたくて、高耶も自ら腕を直江の首に絡めてきゅうっと抱きしめた。
「じゃ、俺も一緒だ」
甘えるように直江の肩に頭を押し付けると、高耶はぼそっと、しかし直江に聞こえるようにしっかりとつぶやいた。
「他ならぬお前のことだからな。」
「・・・・高耶さ・・・」


心に溢れる直江への愛を、恐れないでぶつけてみようと思った。
永遠に失いたくない。でも直江を信じられなくて、虚勢張って突き放して、でも背中ではいつも必死で彼の気配を探っていて。
そういう事を、やめようと思った。そう思えるようになった。
今だって、不安の影が無くなったわけじゃない。
だけど、「直江を愛してる。」その真実は不変なのだから。


「・・・なんてかわいい事言ってくれるんですか・・・っ」
「だってほっ、ほんとだもんよ・・・おい直江っ!くるしいっ!」
今ごろ自分の言ったことに恥ずかしくなってきてどもったのをキツク抱きしめてきた男のせいにして、高耶は慌ててベリッと直江を引きはがした。顔が火照ってるのが自分でも分かる。
「ああ・・・すみません」
そういうと直江はクスクスと笑って悪びれた様子もなく。
高耶の照れ隠しくらい、すべてお見通しなのだ。
「なに笑ってんだよ。ほら飯にするぞっ、早く着替えてこい!」
「はいはい」
まだ嬉しそうな直江の背中をぐいぐい押しながら、高耶の顔はまだほんのりと、赤い。


「高耶さん、今日の夕飯は何ですか?」
隣の部屋で普段着に着替えながら、直江が聞いてくる。
「あ〜?今日はなあ、豚の生姜焼きと、椎茸と豆腐の味噌汁とー、この間お前のお母さんから貰った漬物とー、あといろいろ。」
テーブルと台所を行ったりきたりしながら高耶が答える。
「この漬物、お母さんが漬けたんだろ?すんごい旨いよなー」
「そうですか?良かったらまた貰ってきますよ」
「あ、ほんとか?やり〜♪・・・直江、用意できたぞ。早く来い来い」
「はい」
薄いセーターとスラックスに着替えた直江と高耶は向かい合わせに席につくと、「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。
「高耶さんの作る料理は本当においしいですね」
「お前、毎回言ってるけど食べるたびにそれ言うのやめろよな〜」
一口食べるたびに「おいしい」を連発されるのは、嬉しいけどやっぱり恥ずかしい。
そういわれた直江は、心外だというようにちょっと片眉をあげてみせた。
「でもほんとにおいしいですよ?」
「分かったよ・・・」
高耶としても、喜んでくれるのが一番なことには変わりはない。
ご飯を口に放りこみながら、あきれ半分、テレ半分で頷いた。
「ああ、そうだ高耶さん」
「ん?」
「今度の日曜日に、お花見に行きませんか?桜も見ごろですし・・・」
もう満開の所もあるみたいですしね、といわれて、高耶は目を輝かせた。
「えっマジで!?行く行く!そういや去年は長秀と晴家とお前と俺で行ったんだよな〜」
「・・・あいつらが勝手について来たんですよ・・・」
「そうそう!んで、二人で酔っ払って人に絡んできやがったんだ。"ちょっと景虎あ〜っ!!直江とばっかいちゃついてないでこっちきて遊びましょうよ〜♪"とかいってさ。大変だったよなあ」
「・・・思い出したくも無いですね」
「ぷっ、お前去年からず〜っとそれいってんのな」
「言いたくもなりますよ」
額を押さえながらため息をつく直江が本当に嫌そうで、高耶は思わず吹き出してしまった。
「しょうがねえなあ。じゃ今年はさ、二人っきりで行こうぜ。あいつらには内緒でさ」
高耶がクスクス笑いながらそういうと、直江は苦渋の表情から一転。極上の微笑みを浮かべて頷いた。
「・・・ええ。もちろんですよ」
(うわ・・・)
思わず見惚れて固まってしまった。
「・・・高耶さん?」
「うおっ!・・・あ?あ〜何でもねえっ」
怪訝そうな顔で覗き込まれてはっと我にかえって、高耶は赤くなりつつあわててご飯をぱくつきはじめた。
「高耶さん、そんなに焦ってかきこまなくてもご飯は逃げませんよ・・・」
「むぐ・・・っ」
直江に呆れ顔で言われてしまった。

********

夕食を終えて二人で仲良く後片付けをして。
さてテレビでも見ようか・・・とリビングに行きかけた高耶を、直江が不意に抱きすくめた。
「なっ、何だよ直江」
「高耶さんを急にこうしたくなっただけです」
「何だそりゃ・・・」
クスクスと笑うと、しっとりと口づけされる。そのまま何度もやさしいキスが降りてきて、高耶はうっとりとそれを受け止めた。
「どうしてあなたはこんなにかわいいんでしょうねぇ」
「男がかわいい言われても嬉しくねえぞ」
「それはすみませんでした」
会話の合間にも、啄むようなキス。
「直江」
そっと呼びかけた。
「はい?」
「・・・愛してる、ぞ・・・」
それは高耶の真実。
でも、言葉にしてみるとやっぱり恥ずかしくて。
消え入りそうな声になってしまったが、直江には十分伝わったのが分った。勇気を出して顔をあげたすぐそこに、この上なく幸せそうな直江の顔があったから。
「私も、愛していますよ。あなたから言っていただけるなんて嬉しいです・・・高耶さん・・・」
そう言うと直江は高耶の髪に口づけをおとした。
高耶は途端に自分まで嬉しくなって、へへっと照れ笑いした。
(よしっ!や〜っと言えた・・・)
いつもそうは思っているけど、照れ屋の高耶はなかなかそれを口にだして伝えることが出来ない。
「愛してる」も「好きだ」も、言うたびに恥ずかしくて死にそうになるのだ。
だけど、直江に言われた愛の言葉は高耶を途方も無く幸せにするから。
直江にだって嬉しくなってもらいたい。
だからちゃんと伝えたい。
「覚悟してろよ。これからは・・・た〜くさん言ってやる」
「・・・楽しみですね」
本当に幸せそうな直江の顔に、高耶はにやりと笑うと、ちゅっとキスをした。


こんなにも俺はお前のものなのに、それ伝えないでおくなんて勿体ないだろ?
なんて思えるようになった今日この頃。
・・・ほんと、覚悟しておけよ??



end 


あまあま〜!!!!普段「好き」とか言えない高耶さんだからこそ、何かこーゆー普通の時に言ってるの見ると愛しいです(><)vしかも最後の「覚悟〜」のとこ、すっごい好きですvvvv二人とも幸せそうで、何か読んだ後までニヤニヤしてました*
Amyさん、どうもありがとうございました〜☆
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