「百万回の笑顔を見せて。」前編 BYAmyさん


高耶と直江は、土日を利用して直江の宇都宮の実家に行くことになった。
それと言うのも、いくら言っても全然帰ってくる様子の無い放蕩息子に痺れを切らした橘家の母が直江の兄・兼・上司である照弘に「義明は法事の時期以外は顔も出さない」などと愚痴ったためである。出勤してきた直江に照弘は笑顔で「今週末は高耶君と宇都宮に行って母さんの機嫌とってこい」と告げ、兄に頭の上がらない直江にはもはや選択肢は残されていなかったからだ。

***********

「本当にすみません」
「別にいいってば。・・・ふっ、ぉっかしー・・・お前、さっきから謝ってばっかだぞ」
運転しながらため息、眉間に皺寄せ、「すみません」の三パターンをリズムよく繰り返す直江に、高耶はとうとう噴き出してしまった。それに気づいたのか、直江もつられて苦笑する。
「そうですね。でも、高耶さんまで一緒について来させてしまって」
さっきからそれを気にしていたらしい。確かにお兄さんに宣言されるまで、今日は海までドライブに行く約束だったし、高耶だってちょっぴりは残念だった。でも直江といられるなら、自分は幸せなのに。
直江はもうちょっと自惚れてくれたっていいのに、と時々寂しく思う。
「俺は・・・お前とならどこだっていい・・・よ。」
「・・・高耶さん」
言ってから恥ずかしくなってそっぽを向いていると、直江の手が伸びてきて高耶の髪をやさしく梳いた。それが嬉しくて目をとじて感覚を追っていると赤信号になったらしい。信号待ちの一瞬の隙に引き寄せられてチュッとキスをもらった。

こういうとき、自分は愛されてるんだと感じる。
それが嬉しい。

「私も高耶さんとならどこでも構わないんですが・・・」
「・・・が?」
信号が変わって再び運転に集中した直江はしかし、再びちょっとだけ顔をしかめて見せた。
「実家の母と兄達にこれでもかと言うくらいに小言をいわれてたりからかわれたりすると思うと・・・気が重いです」
「ぷっ!・・・ふははっ」
こんなに(外見は、一応は、)立派な大人でも、家族にしてみればただただ可愛い弟に他ならない。
故に、帰郷するたびにかまわれるのは逃れられない運命であるらしかった。
「高耶さん、そんなに笑わないで下さい」
「だっておっかしいんだもんよ」
クスクス笑っているとポンと頭に手を置かれた。
「・・・そんなにしてると、今夜たっぷり泣かせますよ?」
直江はそう言うとニヤリと微笑む。高耶はポッと顔を赤らめると慌てて目をそらした。
「なっ、なに言ってんだ!今日はお前ん家に泊まんだろ・・・」
「そうですけど?私の愛は場所を選ばないんですよ。ああ、高耶さんもさっきそう言ってくれましたよね」
「そういう意味で言ったんじゃないっ」
「おや残念」
立場逆転。クスクスと笑う直江に怒った高耶。でもそれが本気じゃないことぐらい、お互い分かっている。
それに
(おっ、俺もそういうこと嫌なわけじゃ全然ないし・・・っ)
ただ直江の家族に悪いと思うのだ。
ふと、高耶は妥協案を思いついた。

恥ずかしいのを必死で我慢して、高耶は直江の袖をちょいちょいと引っ張った。
「・・・あんま・・・激しいのは駄目・・・だからな・・・」
最後のほうはもう、消え入りそうな声で告げた。が、男の耳には十分届いたらしい。
驚いたように目を見開いたそのすぐ後に、直江はふっと微笑した。
「・・・御意」

それからのwindomは、快調に宇都宮への道をすっ飛ばしていった。

**********

「さあ着きましたよ」
直江に続いてバタンと車のドアを閉めると、高耶は広々とした家を見上げた。高耶がここに来るのは、ほぼ一年ぶりだ。ぼ〜っと見上げていると、ふいに緊張してきてしまった。
固まってしまった高耶に気づいて、直江は包むように側に立った。
「高耶さん?」
「・・・俺・・・ホントにお前にくっ付いてきちゃってよかったのか?」
今ごろ心配になってきて、高耶は心細そうに直江を見た。そんな高耶の肩を、直江は優しく促すように抱き寄せた。
「当たり前でしょう?あなたは私の大事な大事な恋人なんですから」
それに・・・と直江は真剣な顔で漆黒の瞳を覗き込む。
「そのことも、私の家族に二人でちゃんと言ったでしょう?だから心配しないで」

そうなのだ。
高耶と直江は一年前、同居を始めるときにお互いの家族に本当のことを告げたのだ。
反対されてもかまわない。ただ、嘘はつき続けたくなかった。だから。
しかし、幸せなことに両家とも二人を祝福してくれた。
特に橘家はほぼ全員がとっくの昔に気づいていたらしく(千秋&綾子曰く:当たり前。知らぬは当の本人たちばかりなり)、二人で言う前からなにやら宴の準備がなされていたほどだった。

「そう・・・だったな」
高耶は直江の言葉に勇気づけられて、やっとはにかむような笑顔になった。

直江の言葉はいつだって、心の奥に染み込んで高耶をじんわりと暖めてくれる。大丈夫だ、と思わせてくれる。

「・・・行きましょうか」
「おう」
愛しい人の、家族の元へ。
高耶は直江の差しだした手に自分の手を重ねると、ぎゅうっと掴んで歩き出した。
二人並んで玄関のドアを開ける。

「・・・ただいま。」


                                       続く・・・
 


前後編だそうですvってか前編を頂いてだいぶ時間が経ってしまいました(汗)すみません;;
直江の実家だからって遠慮する高耶さんが可愛いです(><)vこれからどう展開するのか楽しみです☆Amyさん、続き楽しみにしてますね〜v
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