「帰宅のひととき」 BYえいみいさん



愛してるとか、好きだとか、俺はなかなか言えないんだよ。
照れくさいって気持が邪魔してさ。
だから違う方法で伝えたかったんだよ。
それだけ。
愛してるよ、直江


「ただいま帰りました‥」
最近ちょっと寒くなったかな、という秋の午後。
長い出張(たとえたった3日でも二人には長い)を終え、ほくほく顔で帰ってきた直江はキッチンにも部屋にも高耶がいないのを確認してがっかりと肩を落とした。
早く顔が見たかった。3日間、恋焦がれて気が狂いそうだったのだけれど。
(買い物にでも行ったんだろうか・・・)
まあそれなら仕方がない。
鞄も置かずに、小さくため息をついて顔を上げると
「・・・?」
テーブルに手紙を見つけた。そっけないほど真っ白な封筒。手にとってみれば「直江へ」の文字。
(まさか「さよなら」とか書いてないだろうな)
「まさか・・」
自分の想像に自分で弱々しく突っ込みつつ開けてみると、これまた真っ白な便箋が一枚。ちょっと躊躇ったあとに開いた直江は、少し驚きに目を見張ったあと、
高耶がみたら真っ赤になりそうな、最高の笑顔に変わった。

* ***************

(やっぱりあの手紙はしまっておこう・・・)
両手に大量の買い物袋を下げつつドアの鍵を開けるという難儀な技をこなしつつ、高耶の頭は例の手紙でいっぱいいっぱいだった。
直江の不在が死ぬほど寂しかったくせに、電話越しだと強がってしまう自分。あれほど電話を待っていたくせに。愛しくて愛しくて、でもその気持ちを口にできずにどうしていいか分からずに思うままに手紙を書いた。自分の思いのほんの一部でも直江に伝わるといいと思いながら。
・ ・・・が。
「駄目だ。ハズい・・・」
やっぱり恥ずかしがり屋な高耶。
(いや・・・いいんだ。直江の好きなもんいっぱい作ってやろう・・・)
それが今の自分に出来る精一杯の愛情表現。はあ、とため息一つ。
「お帰りなさい」
「ただい・・・うああっ!!?」
玄関のドアを開けた瞬間たった今まで悩ませていた張本人が出現して、高耶は思わず買い物袋をガコガコとぜーんぶ落としてしまった。
「大丈夫ですか!?」
「あ・・・ああ」
あわてて荷物を集める直江だが、高耶は嬉しくてボーっとしてしまった。
(3日ぶりの直江だー・・・)
「・・・高耶さん?」
「・・・あ?」
大丈夫ですか?といわれてハッと気付いた。
「あ・・ああお帰り!」
高耶の目が泳ぐ。
やばい!
「は・・・早かったんだな!」
あれどこ置いたっけ!?・・テーブル、テーブルだ確か!
「ええ、早くあなたの顔が見たくて・・・高耶さん?何探してるんです?」
「ちょ・・・ちょっとな!」
ああやばい・・・
猛スピードでキッチンの脇のテーブルに走って行く高耶を、直江はにっこり笑って後を追う。
「なかなか言えない、ですか・・・」
「うんまあな」
(テーブルにない・・!どこだ!?)
「違う方法で、探したらいかがですか?」
「うん・・・・うん・・?」
ないないないない・・・・。
(・・・・・・)
一瞬、高耶の思考が止まった。

「うわああああ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!?」

ホラー映画なみの叫び。しかし高耶はここまで恐ろしい場面に出会ったことが無い。
あまりの恐ろしさに一瞬心臓が停止してしまった。
直江はにっこり笑うと、「うわあ」の形のまま固まっている高耶をきゅうっと抱きしめた。
「高耶さん」
「・・・・・」
「嬉しかったですよ」
「・・・・・うう・・・」
あ、声出た。
直江がぽんぽんと高耶の頭を撫でて、またぎゅうと抱きしめる。
直江のあたたかさで解凍された高耶は、今度は恥ずかしさで真っ赤になった。
「・・・・読んだか?」
「ええ」
「全部?」
「もちろん」
(全部・・・っ!)
ああ、俺の秘密が・・・・!渡すつもりだったけど止めたあの手紙が・・・!
「・・・・・うう・・・」
「高耶さん?」
「・・・・・」
「嬉しかったですよ」
言いつつ額にキスを落としてくれる直江に、高耶の気持は浮上してきた。
元々落ち込んではいないのだけど。恥ずかしかっただけだけれど。
「・・・ほんとか?」
「もちろん」
そしてまたキスを一つ。
恐る恐る顔を上げると、最高に嬉しそうな直江と目があう。
一瞬で高耶まで嬉しくなってしまった。
「じゃあ、いいか」
「ね。」
何より、直江が帰ってきたんだ。何が嫌なもんか。
直江の首に腕を絡めて、顔を寄せて
「・・・お帰り、直江」
「ただいま、高耶さん」
「さみしかった」
「知ってますよ」
くすっ笑われてムッとした後。
「・・・私もです」
囁くような告白に、今度は高耶が、
くすりと笑った。



お帰り直江。
電話んとき、いっつも不機嫌でごめんんな。
愛してるとか、好きだとか、俺はなかなか言えないんだよ。
照れくさいって気持が邪魔してさ。
だから違う方法で伝えたかったんだよ。
それだけ。
愛してるよ、直江


読んでみて、「こンの直江の幸せ者が〜〜!」と心の中で叫びました(笑)。
もうデレデレですねっ。ほんと羨ましいっ。
たまには少し離れてみるのもいいのかも。そうすることによって、新たな発見とかありますものね。えいみいさん、今回も素晴らしいあまあま作品を、ありがとうございました!

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