「甘い生活・当日編」 BYしろわにさん


朝の柔らかい日差しに優しく照らされて、高耶は目を覚ました。
身動きしようとして、自分が男の腕の中にいることに気が付く。高耶が僅かに身じ
ろぐと、直江がかすかに動いたので、起こしてしまったかと慌てたが、幸い直江
はそのまま眠っているようだった。
高耶が目を覚まして、直江が眠っているのは珍しい。
直江の寝顔を見たいと思ったが、胸に抱きこまれている今の状態では、あいにくと
直江の顎しか見えなかった。あくまでも起こさないようにそっと直江の腕をはずし
て、少しずつ直江の顔の覗きこめる場所へと移動する。
朝の光を浴びて、直江の色の薄い髪が金色に透けて、綺麗だった。
高耶は思わず、その髪に触れる。柔らかい感触が楽しくてしばらく触っていたが、
だんだん自分が起きているのに直江がそれに気付かず眠っているのが腹立たしく
なってきた。
疲れているのだろうとは思う。取材、と言っていたが、どこに行っていたのかは高
耶は知らなかった。ただ、ここ2、3日、直江は憔悴した顔で帰ってきていて、高耶
はひどく心配したのだ。だから、ゆっくり寝ていてほしいとも思う。
だが、はやく目を開いて、あの鳶色の優しい瞳に自分を映してほしい、と願ってし
まうのも事実なのだ。
高耶は直江の顎をそっと撫でた。わずかに伸びたひげが指先にあたる。それも角度
によっては金色に透けて見えた。剃りのこしなのか、一本だけ長いひげを見つけて、
高耶はついそれを引っ張ってしまった。
それで、直江は目が覚めたらしい。
「……おはよう、直江。もう、9時過ぎているぞ」
高耶が声を掛けると、直江は目を瞬き、それからあの低い声で、おはようございま
す、と挨拶した。
「高耶さんより遅く目覚めるとは、申し訳ありません」
「なにを大げさな」
「いえ、決して一人にしないと誓いましたから。万一起きなかったら、抓っても
かまいませんよ」
直江がしごく真面目な顔でそう言うので、高耶は思わず笑ってしまった。

遅めの朝食は、雑炊にしてみた。昨日の夕食のぶんのご飯が残ってしまっていたか
らだが、直江はなにか胸焼けしているようだったので、ちょうどいいだろうと思った
のだ。
わかめとしいたけ、卵と出し汁、しょうゆと塩で味付けという極めてかんたんなもの
だったが、直江は幸せそうな顔で箸をすすめている。
「おいしいです、高耶さん。すみません、ちょっと昨日の昼に食べたものが悪かっ
たようで……」
「なにを食べたんだ?そんなに響くのか」
「……綾子のケーキ失敗作を、食べさせられました……」
「そ、そうなんだ。ねーさん、今年は手作りに挑戦か」
高耶が想像してわずかに眉根を寄せる。
「そうだ、食後に貰ったケーキ食べようかな〜」
思い出しついでに、昨日貰ったザッハトルテを食べようかな、などと呟くと、直江
はいきなり箸を置いた。
「高耶さん、その……デ、デザートなら、ちょっと待っていてください!」
慌てたように立ち上がって、なにやら包みを持ってきた。
「今日は、バレンタインですから。私以外からのチョコレートは明日にしてくださ
い」
そう言って、包みを高耶に差し出した。
包装紙は、ブランドのものではない。それを少し意外に思いつつも、高耶は丁寧に
包みをはがした。
「わあ……もしかして、手作りなのか?」
直江は黙って頷く。
「もしかして、ここのところ、コレのために疲れた顔を?」
直江はバツの悪そうな顔をした。
「すみません、高耶さん。心配をおかけしたようで……」
高耶は首を振った。
「ううん、ありがとう、直江。まさか、直江が自分で食べられもしないケーキを焼い
てきてくれるなんて思わなかった。すごく、うれしい……」
高耶が直江を見上げて礼を言うと、直江は笑った。
「高耶さんからも、頂きましたからね」
高耶は思わず赤くなった。
「き、昨日は、バレンタインじゃないし!ただ、作ったからだし!……だから、お返し
はするぞ?」
最後のほうは小さな声で高耶が言うと、直江はふっと口元を緩めた。
「……期待しています」
さっそく直江の手作りケーキを厚めに切り、ホットミルクと一緒に食べてみる。
バレンタインにちなんだからだろうチョコレートケーキは、初めて作ったにしては
なかなかだと思った。
「おいしいですか?大丈夫でしょうか。レシピ通りに作ったのですが」
心配性の男が、高耶のフォークの先のケーキの切れ端を心配そうに眺める。
「直江、ほら、口開けて」
高耶は直江の口に、そのケーキを運んでやった。
「ほら、おいしいだろ?」
「……甘いです……」
直江らしい感想に、高耶は思わず笑った。

ということで、続きですね(^^) 直江の髭を引っ張る高耶さんに萌えvでした。
そうですよね〜。よく略されますが、男なら朝生えてるでしょう;; いかな直江だとて。その髭を思わず引っ
張る高耶さん。くぅ〜〜、ツボに入りました!! 
それに、直江が作ったケーキを仲良く食べるシーンが、幸せそうでいいですねっ! あまあまでしたよ(^o^)
しろわにさん、ありがとうございました!!
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