「恋しいきもち」 BY京香


温かな腕に包まれていると、とても心が安らいだ。
同じ男なのに、オレよりも胸が広くその腕は力強い。なのに、胸の前に回された両腕は意外なほど優しくオレを包み込んで、安心して身を任せることがことが出来るのだ。
男のつけている男性用コロンが鼻をくすぐった。耳障りの良いバリトンが鼓膜を震わせるたびに、オレの胸はおかしいくらいに高鳴る。
女じゃないのに、女みたいにうっとりしてしまう自分。今の自分は、かつてこの男がその腕に抱いてきた女と同じ表情をしているに違いない。それでもいいと思った。何故なら、今この幸せを味わっているのは自分なのだから。
自分だけがこのぬくもりを味わっているのだから。


「高耶さん、気がつきましたか?」
「あ…、オレ」
目を開けると、端正な顔立ちをした男の顔がアップで飛び込んできて高耶はドキッとした。見慣れているとはいえ、突然は心臓に良くない。高耶は慌てて目を逸らして、部屋の中がいまだ暗闇に包まれているのを知った。
「まだ夜明けには早い時間ですよ」
察してそう言った男の手が高耶の髪を梳いた。それを心地よく思いながら、
「…オレ、寝ちゃったのか?」
「えぇ。あれからすぐに。…すごく気持ちよさそうでしたよ。上気した顔でうっとりと目を閉じているあなたは、どうにかしたいくらい素敵でした」
「バ、バカっ」
男のからかいにパッと顔を赤らめた高耶は、プイッと顔を背けた。その動作で、掛けられていた毛布が肩から落ちた。とたんに現れる白い肌。高耶のすべらかな首筋から鎖骨に沿って見える鬱血の痕は、先ほど直江が付けたものだ。
「高耶さん…」
直江は目を細めると、高耶の細い体に腕を伸ばした。その不穏な手の動きに、高耶は警戒する。
「な、なんだよ。言っとくけどな、今日はもう終わりだぞ」
先ほどは散々泣かされたのだ。声を上げ続けたせいで喉が痛い。しかも体はだるいし、頭は重いし…。今日はもう、このまま寝てしまいたかった。しかし、そんな高耶にお構いなく直江は唇を寄せてくる。項に降ったキスに高耶は肌をさざめかせる。思わず毛布を引き寄せて、男の甘い攻撃を交わしてみるが……。
冷めたはずの熱が、直江の悪戯によって徐々に燃え始める。
言葉では嫌がっても、体が直江を欲して熱くなる。
(もっと…、もっと触れて欲しい……)
「…!」
突然浮かんだその思いに、高耶は狼狽えた。
(オレ、今なにを…)
無意識のうちに浮かんだ淫らな思考に、高耶はカァッと顔を赤らめた。もっと触れて欲しいだなんて、女じゃないのに…。
高耶は何かというと、「女」を意識した。それは、直江と対等でいたいという気持ちと、多分、かつて直江が相手をしてきた数多い女達と同列にしてほしくないという気持ちからくるものだった。もちろん、今は自分が彼にとって「特別」であることは知っている。けれど、不安なのだ。自分がそこまで、直江に愛される価値がある人間なのかどうか。
直江が好きだからこそ、不安になる。そして、嫌われたくないから卑しい部分を知られたくない。
高耶は恥ずかしいことを思ったことに自己嫌悪した。とても顔を合わせられなくて毛布の中で丸くなっていると、いきなり毛布を剥かれた。
「! なっ……」
体を隠すものが無くなって、瞬時に顔に朱を上らせる高耶に直江はクスッと笑った。
「嘘はいけませんねぇ、高耶さん。本当はもっと抱いて欲しいって思っているくせに」
「!? なっ、なに言って……!」
「隠してもわかる。あなたの考えていることなんて」
(!?)
言うと直江は、驚く高耶の上に覆い被さってきた。
「オ、オイっ、直江っ! ……アッ!」
「まだ足りないでしょう? ここがもっと吐き出したいって言っている」
言いながら、まだ柔らかいままのそこを揉みしだいてきたので、高耶はビクンと体を震わせた。
「な、おえ…っ」
なんでわかんだよっ! とは当然口には出さない。そんな事を言った日には徹夜決定だ。
「…ハ……」
直江の長い指が、器用にそこに絡み付く。男の指が巧みにそこを転がす度に、高耶の体に甘い痺れが走った。先ほど散々弄られたくせに、愛撫に忠実なそこがまた勃ち始める。
気持ちいい…。
直江の愛撫にとろけた脳が、素直な感想を弾き出す。
弄られているそこも、口に含まれている乳首も、燃えるように熱い。
あまりの快感に、今度は理性が入り込む隙間がない。
高耶は顔を仰け反らせると、足の間に轟いている男の手に自分のそれを重ね合わせた。そして、せがむように男の手の甲に爪を立てる。
(…な…おえ………、…っと…)
されていることはとても恥ずかしい事なのに、とても気持ちが良かった。ふわふわと宙に浮いているような錯覚に陥りながら、高耶は甘い声を上げた。
(なお、え……)
唐突に「好き」と気持ちが溢れて、高耶は瞳を潤ませた。
…きだ、……なお…え…。


好き、だ…。


高耶は幾度目かの嬌声を上げると、そのまま吸いこまれるように眠りについた。
整わない呼吸が、高耶の胸を緩く波ただせている。
頬に、涙の跡が残っていた。感じ過ぎた高耶が流した喜びの涙だった。
直江は、高耶の涙の跡を唇で辿ると微笑した。直江だけが見る事が出来る、高耶の満たされた寝顔。
まだ熱い体を抱き寄せて、その耳に甘く囁く。
「おやすみなさい、高耶さん」
直江は幸せそうに微笑むと、高耶の髪に顔を埋めるようにして瞳を閉じた。


誰よりも愛しい人の吐息が、夜気をそっと震わせた。


おわり

あまーい!!うあぁぁぁぁっっ!!もうヘンな叫び声しか出てこないですよ(^−^;)高耶さんかわいい(^0^)そしてっっ!高耶さんビジョンの直江がかっこいい(笑)ああああああ☆いいですね〜♪何か久々に直江にときめきましたv(爆)
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