クリスマスお題「サンタクロース」 by.メイシャンさん


とある銀製品のショップで。
サラサラ黒髪とキラリン暗褐色瞳の仰木高耶は、タイガースアイを煌かせ、今年
のクリスマスプレゼントを決めた。
コイン型の銀のキーホルダー。ただし、それを買うには手持ちの金がたりない。
よし。バイトだーー!
と。強い決意のもと、期間限定のアルバイトをすることにした。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「じゃ、これ、着てくださいねー。」
事務所のオネエサンが高耶に渡した衣装は、真っ赤な生地に白いフワフワのつい
た、サンタクロースの衣装だった。
「えっと、あの、これ、着るんですか・・・?」
深志の仰木がサンタクロース・・・!
何かの間違いであることを願った。しかしオネエサンは無情にも高耶の願いをあ
っさりと打ち砕いた。
細いフレームのめがねの縁を押し上げながら、神経質そうな声で言った。
「そうですよ。あなた、細いからサイズ大丈夫ですよね。それで、街頭に出ても
らいます。」
「は・・・そうですか・・・」
覇気の無い返事をして、ロッカールームに着替えに向った。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「よろしくおねがいしまーす!」
「どうぞー」
寒風吹きすさぶビジネス街。ビル風が安物の薄いサンタクロースの衣装を着た高
耶の体温を容赦なく奪ってゆく。
道行く人達にティッシュを配る。これが、高耶のバイト。
ティッシュ配布元は大手パチンコ店。時間制ではなく、持たされたティッシュを
配り終わるまでやらなければならない。
高耶のすぐとなりには、消費者金融のティッシュ配りをしている同年代の女の子
がいた。その子もサンタクロースの格好をしている。ミニスカートが見た目にも
寒そうだ。
どうして、この場所に決まってるんだろう・・・高耶は嫌になっていた。
ただでさえ、ティッシュを受け取ってくれない人もいるというのに、ミニスカの
女の子がとなりでやっていたら、こっちからもらってくれる人は、ますます減っ
てしまう。そうすると、配り終わるのも遅くなるわけで、自動的に帰る時間も遅
くなる。
(ちっくしょ・・・)
運の悪いことに、そこそこに可愛い子だったのが、ますます不運だった。
人通りの多い道のこと、高耶のほうから受け取ってくれる人もかなりいた。それ
でもペースが遅れ気味なのは、仕方が無かった。
(やべ・・早く終わらせないと、直江の夕飯に間に合わねーぜ)
夕飯に間に合わない、遅くなる、などと連絡をいれたら、どこで何をしているの
か、としつこく聞かれることは間違いない。恋人に過保護すぎる直江だ。
(客観的に見て・・・俺、愛想がないのが良くないのかも・・・笑ってみっか)
にこっ!作り笑いながらも笑顔で渡すようにしてみた。
この作戦は、高耶本人もビックリな効果が出た。
OLのオネエサマ方、近隣の大型ショッピングビルに行く途中らしいオバサマ方、
そしてなぜかサラリーマンの男性もわざと高耶の近くを通り、ティッシュを受け
取るように人の流れが微妙に変わった。
(お!こりゃ、イケるかも!)
どんどん受け取ってもらえれば、自然と機嫌もよくなる。作り笑いに、やや本気
の笑顔が混じる。すると、ますます人の流れが高耶のほうに向く。
女の子と同じぐらいのペースで配れるようになってきた。
(やったぜ!)
ちょっとした気配を感じて振り向くと、女の子と目が合った。にこっ。彼女もテ
ィッシュ配りのスピードを気にしていたようだ。
笑った目が「良かったね」と言っていた。高耶も「うん」と瞳で返事した。
きっと、この子も恋人へのプレゼントを用意するためにアルバイトしてるんだな。
可愛い笑顔の二人からはどんどんティッシュがはけていった。
それをビルの陰から見つめている黒い影があった。
「高耶さん・・・」
直江である。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

高耶さん・・・!そんなかわいい格好で外に出るなんて!どうして私に教えてく
れないんですか!
直江は、一体どんな力を使ったのかは不明だが、高耶のバイト先を見つけ、様子
を見にやってきたのだった。
白いボンボンとフワフワのふちがついた赤い三角帽子から出ている黒い髪は、赤
い衣装にとてもよく映えていた。衣装の袖がちょっと短くて、細いけれどしっか
りとした手首が白いフワフワの縁取りから見えている。脚の長い高耶には、サン
タの格好がとても似合っていた。
高耶さん・・・なんてかわいいんだ・・・!
直江の目には、隣のミニスカのサンタっ娘は全く入っていなかった。

ああっ!今受け取った女は明らかにわざと高耶さんの手に触った!
あのサラリーマンは高耶さんからもらえるように、歩幅を調節した!
ビル陰からティッシュ配りのサンタを見て、ブツブツ言っている直江は明らかに
不気味だった。通行人が、直江のほうを見ないようにして通り過ぎてゆく。

うらやましい・・!私も高耶さんからティッシュをもらいたい!
ごほん、と一つ咳払いをし、おもむろに二人のほうに向って歩き出した。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

あと10メートル・・・あと5メートル
高耶さんは私を見たら、あの笑顔で・・・
『直江・・・こんなところまで、俺に会いに・・・・ありがとう・・・直江・・・』
と言ってくれるかもしれない・・・そしたら・・・
『高耶さん、こんなかわいいサンタは初めて見ましたよ』
高耶さんの手を握って・・・抱き寄せて・・・

などと、ワケのワカラナイ妄想をしつつ、あと三歩・・・
(高耶さんからティッシュをもらったら・・・)
あと二歩・・・
(そのまま握って・・・抱き寄せて・・・)
妄想最高潮である。
あと一歩・・・
サンタに向って手を出した。

「どうぞー、よろしくおねがいしまーす」
手を出した直江の前に出されたのは。
高耶にしては細くて小さな手。マニキュアが塗られた見覚えのない形の爪。
直江が来たとき、ちょうど高耶と女の子の二人ともが向きを変えたのだ。
直江の進行方向から見て、さっきまで右向きだった女の子が左。左向きだった高
耶が右。今の高耶は、完全に直江に背を向けている。「よろしくおねがいしまー
す」と、グレーのスーツのOL風の女性に渡していた。
仕方なく、曲がり角まで歩き、さっと路地に入る。すぐさま身を翻し、もう一度
だ。
「どうぞー」「おねがいしまーす」
よし。今度こそ・・あと二歩・・・あと一歩・・・よしっ!
さっ。手を出した。
しかし、ドンッ!
音がするほど体当たりをされ、よろめいた。
「ちょっと!もう一つもらえる?!」
ふくよかな年配の女性。薄紫の髪にド・ピンクのスーツのオバサマが直江を押し
のけ、高耶からもう一つ奪い取った。
「だいじょうぶですかー?どうぞー」
押しのけられた直江にティッシュを渡したのは、またもや女の子の方だった。

くそっ!もう一度だ!
三たび、高耶からティッシュをもらうために引き返した。
三歩・・・二歩・・・
高耶さん!こんどこそ!その笑顔で私にティッシュを渡してください!

そして、ついに、高耶のすぐ近くまで来た。
しかし・・・


「おわった!」
「あたしも!」
お疲れ様、とどちらからともなく笑いあった。
「事務所戻るの?」
「戻るよ。」
「どこ?」
「○△駅の近く」
「うっそ。隣駅じゃん。」
「ほんと?じゃ、行こか。」
ティッシュを受け取るために手を差し出したポーズのまま固まっている直江に気
付かないまま、二人とも事務所へ戻るべく、歩き出した。
サンタクロースの格好をした二人組みは、道行く人が振り返るほど可愛い。
「俺さー、最初、終わんねーかと思ったよ!」
「あ、ごめんねー」
「いや、あんたのせいじゃねーし。」
「君も最初から愛想良くすれば良かったんだよー」
「だよなー」
「あはははは!」


サンタ二人組みを固まったまま見送る直江の足元を、冷たい北風が通り過ぎてい
った。


さて。クリスマス当日。
バイトの甲斐があり、高耶は、予定のプレゼントを用意することが出来た。まず、
高耶からコイン型の銀のキーホルダー。
「もう、一緒に住んでるのにキーホルダーってのもなんだけど、コレ、カッコイ
イから直江が持つのに似合うと思ったんだよな。」
「ありがとう高耶さん、大切に使います。私からも。」
直江が高耶にプレゼントしたものは虎の形に透かし彫り加工をしてある銀の指輪
だった。
「あなたには虎が似合います。」
まっすぐに見つめられて、高耶の頬がピンクになる。
「ありがとう、直江。俺も、大切にする。」
テーブルを挟んでのフレンチキス。
今夜の甘さを予感させる。
直江がもう一つ、と言い出した。
「もう一つ、プレゼントをねだってもよろしいですか?」
「何?どんなもの?」
「あなたから、ティッシュを渡して欲しいんです。」
直江にバイトを見られているとは知らない高耶だ。まして3度もティッシュを受け
取るために道を往復していたことなど知る由も無い。
『ティッシュを渡す』『あなたから』にどんな意味が含まれているのか、考えた。
ティッシュ・・・風邪・・?いやちがうな・・・あ!もしかして!!・・・
高耶の中で答えが導き出されたようだ。

「分かった。直江・・・じゃ、先に寝室に行ってるから・・・少ししたら来てく
れ。」
直江は、なぜ先に寝室に行くのか分からなかったが、寝室にポケットティッシュ
でも置いてあるのだろう、と素直に思った。
煙草を一本吸い終わり、寝室に行くと。
ベッドヘッドのスタンドだけを灯けた部屋。全裸の高耶がベッドの上で片膝を立
てて、こちらを見ていた。身に着けているのは、さっきのプレゼントの指輪だけ。
タイガースアイを煌かせ、赤い唇で指輪にキスする。その間直江から目線をはず
さない。
「来いよ。直江。」


直江は、高耶がこんなイロッポイ誘いを自分からしてくれて、うれしいものの、
サッパリワケが分からない。
けれど、こんなオイシイ状態を見逃すわけもなく、高耶の誘いに乗って思い切り
クリスマスのイイ夜を楽しんだ。
今夜の高耶は、終始積極的で、直江に促されなくても扇情的なポーズをとり、官
能的な表情を惜しげなく見せた。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「高耶さん、今夜はどうしたんです?」
ぐったりと疲れて直江の上に突っ伏した高耶の髪を梳きながら聞いた。
「だって・・・これがお前の『欲しかったもの』だろ・・・?」
けだるげに答える。
「ティッシュを渡してほしいって・・・ティッシュは風邪とか・・・感動物のテ
レビとか・・・あとは今のコレとか・・・に、使うから・・・・『俺から』『テ
ィッシュ』っていうのは、俺からSEX誘え・・ってこと・・・だろ・・・」
疲れきってしゃべるのも億劫そうだ。
直江は、やっと高耶が積極的だった理由が分かった。そういうことだったのか。
高耶は完璧に勘違いしていたのだ。
直江は本当に、ただティッシュを手渡しして欲しかっただけなのだが、直江の日
ごろの行いの賜物(?)で高耶はソッチ方面のことだとすっかり思い込んでいた
のだ。
「でも・・・こんなの・・・・今日だけ・・・だからな・・・」
疲れ果てて眠そうである。
直江は、すでにティッシュなどどうでも良くなっていた。ゲンキンにも程がある。
「高耶さん、そういわず・・・また、ね。寝室を開けたとき・・・夢でも見てい
るのかと思いました。あなたがあんまり色っぽくて・・・」
あわよくば、もう一度ヤろうと高耶髪をすいていた指を背中になでおろす。
「・・・・・・・」
「高耶さん・・・」
名を呼びながら耳の後ろをくすぐる。
「・・・・・・・」
「?高耶さん・・?」
感度のいい高耶らしくない無反応をいぶかしむ。
「すー、すー、すー、・・・」
高耶は、すでに眠っていた。
ここ数日のアルバイトと、さっきの激しいSEXでもう限界だったのだ。
クスっと笑うと、悪戯しようとしていた指を高耶の頬に滑らせた。

直江は、高耶を抱きなおし、すっぽりと腕の中に入れると、布団をかけて、自分
も寝ることにした。
「メリークリスマス、私のサンタクロースさん。おやすみなさい、いい夢を・・・」



高耶さんのサンタ姿!!絶対可愛いんでしょうね〜〜〜!!*^o^*最近、スーパーの店員も、サンタ
の帽子を被りながら仕事してますね。私が働いていた時は、そういうの無かった…。
それにしても、最後の高耶さんにはヤラレタって感じです♪片膝立てて、お誘いしてもらいたいです
ねっ(殴ッ)。指輪だけってのが、また破廉恥!♪直江、良かったね(笑)。
メイシャンさん、素敵な作品をありがとうございましたvvv
*back*
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送