クリスマスお題「プレゼント」 by.真波さん


モテ過ぎる恋人が居ると、要らない苦労をする気がする。
ましてや、あまりおおっぴらに出来ない恋人ならば。




オレの名前は仰木高耶。
目つきが悪いと良く言われるフリーター男、22歳で彼女ナシ。
…恋人はいるけどな。
彼女ナシで恋人アリ。
つまり彼氏持ちなわけだ。
オレの彼氏は直江信綱なんて古臭い名前で、11コ年上の幼馴染。
いわゆる一流企業でエリートサラリーマンやってるらしい。
エリートってのはオレの身びいきかもしれないけど、晩メシ一緒に食おうとか、映画
見ようとかって呼び出されて行った、あいつの会社なんてすごいんだぜ?
オフィスビル街のど真ん中に、壁がガラス張りのでっかい自社ビルなんだからな。
今日も今日とてオレはあいつに呼び出されて、会社のビルの前で待ちぼうけてる。
オレがあいつの終業時間より早く着いちまったせいだ。
12月にしては暖かいけど、それでも日が落ちたらかなり寒い。
直江に早く会いたいのは会いたいけど、寒いことは寒い。
道の反対側にあるコーヒーのチェーン店の隅っこに陣取って、会社の入り口を見張っ
ていると、6時を少し回った頃合いにあいつの姿が見えた。
人より頭一つ高くてすぐ判る。
それにあんなイイオトコ、あいつ以外に居る筈無いし。

で。
それはいいんだけど、あの回りの女どもは一体何なんだ。
ああもうオレの直江に引っ付くな声掛けるな近寄るなっ!


チクショウ。
何かいい虫除けって無いかな。








数日後、自分ちでのんびりしてると、美弥が台所でごそごそやってるのを見つけた。

台所でごそごそしてる割には、料理してる風でもない。
どっちかっつーと粘土遊びだな。
「美弥、粘土遊びなら別に自分の部屋でいいだろ?」
「粘土遊びじゃないもんっ! アクセサリー作り!」
「粘土のアクセサリーか?」
美弥がいじってるそれは、どう見ても白っぽい粘土だ。
でも紙粘土ともちょっと違うような…
「違うのー。銀粘土って言って、ちゃんと形にして焼いて磨いたらシルバーになる
のっ」
美弥の奴、ちょっと膨れながらごちゃごちゃと色んなパーツを出してきやがった。
ピアスやらネックレスやらその他色々作れるそうだ。
「折角だからお兄ちゃんも作れば?」
いや、オレがそんなモン作っても…


…そうだ。
指輪でも作って直江につけさせれば、女避けに丁度いいかも。
あ、だけど作っても直江の指に入らなきゃそれまでだし…
「はぁ… お兄ちゃんってば、ほんっとーに直江さんが好きなんだね」
「あ? 今更何言ってんだよ」
「ううん、何でもない。指輪がダメなら他の作りやすいものにすればいいじゃない」

「ああ、そうだな。そうするかな」
って、いつの間にかオレも作ることになってるし。
その前に何で指輪がどうとかって美弥が言うんだよ。
「お兄ちゃんの考えってわかりやすいから」
だから溜め息混じりに言わなくたって。




美弥から教えてもらった手順はすごく簡単だった。

1.形をつくる。
2.乾かす。
3.焼く。
4.磨く。

手順は簡単だけど、形を作るのが案外難しい。
思い通りにならなかったり、うまく行ったと思ったらつぶれたり。
結局、クッキーの型で型抜きしちまった。
だから形は大きめのハート型。
星か丸もあったんだけど、オレの気持ちって言ったらこれだろやっぱ。
型抜きしたハートに金具を差し込んで、ドライヤーで乾かす。
「じゃ、美弥もお手伝いしてあげるね」
隣には美弥が作ってくれたのが並べられて乾くのを待ってる。
同じハート型に小さい翼がついたやつで、オレが作ったのとお揃いっぽい感じだ。
嬉しいけど兄としては何だか複雑だぞ…






クリスマスイブ当日。
予定通り直江の部屋に合鍵で入り込んで夕飯を作ってると、直江が帰ってきた。
「ただいま、高耶さん」
そう言って一抱えはある深紅の薔薇の花束をオレに差し出してくる。
「おかえり、直江」
ま、悪い気分じゃないよな。
花束貰うのも、こうやって『おかえり』って言ってやれるのも。
「メシ、出来てるぞ。今日は鳥とシチューとサラダな。ケーキはさっき宅配が届いた
から、デザートに食おうな」
「鳥って…せめてチキンといいませんか」
「どっちでも大差無いだろ」
言い方はともかく、手間も愛情もたっぷりで見た目も豪華になってるんだからな!
「………着替えてきます」
「おう、メシの準備しとくから早くな」
今のうちに、プレゼントをどうやって渡すか考えないと。



でも。
プレゼントのことを覚えてたのはそこまでで、直江とメシ食ってケーキ食ってワイン
飲んだらすっぱり忘れてた。
デザートのケーキとワインの時点で、えっちになだれ込んでた所為だ。
ヤリ過ぎで墜落睡眠かまして、気づいたら朝になってた。
いつも通り、きちんとパジャマ着せられて直江にしっかり抱きこまれてたりするのが
嬉しい。
「は、プレゼントっ!」
重い体引きずってベッドから這い出そうとしたら、直江に止められた。
「まだ、のんびりしててもいいでしょう?」
「やかましい。誰のせいでプレゼントを渡し損ねたと思ってるんだ」
ぎろっと睨みつけてやると、直江の奴、顔色変えやがった。
自分もプレゼントの存在をすっぱり忘れ切ってたらしい。
「仕切りなおし、ですね」
直江が誤魔化すようにぎゅっと抱き締めてくれたから、バツの悪さなんてどっか行っ
ちまった。
二人してプレゼント引っ張り出してきて、行儀悪くベッドの上に座り込んだままプレ
ゼント交換。
直江のも、オレのも、てのひらサイズの小さいやつだった。
直江が期待した目で見つめてくるから、オレが先にプレゼントを開いた。
そしたら中身はやたらと高そうな腕時計だった。
「直江っ!」
「指輪だとあなた、怒るでしょう? だから俺と同じ時を歩いていって下さいという
意味で時計にしたんですが」
うぅ、そういうプロポーズ紛いは反則だぞっ!
それにこんな高そうなモン…なんて思ったけど、直江があまりにも嬉しそうに微笑ん
でるから、オレは何も言えなくなった。
だってオレ、直江が好きだから直江が笑っててくれるのが嬉しいんだ。
女避けになるようなプレゼントなんて考えてたのが、恥ずかしくなった。
女避けがどうこうっていうよりも、直江が喜んでくれるプレゼントが一番良かったん
だ。
「おや? これは…」
そう、オレが用意したのは携帯ストラップだった。
シルバーのハートが二つ、小さいリングを通して繋がってて、根っこの方は革紐で携
帯に繋げるようになってる。
ハートのうち、片方は小さい翼つきだ。
革だからあんまり可愛すぎないし、ハートだからインパクトもばっちり。
だけど直江が気に入ってくれなかったら…
「ありがとうございます! 一生大事にしますからねっ!」
とびっきりの笑顔でしっかりと抱き締められて、オレの心配は綺麗さっぱり吹き飛ん
だ。

やっぱ、オレの直江ってば最高!












ちなみに。
オレの携帯にもお揃いのストラップがくっついてるのは、まだ秘密だ。




終。



銀粘土ですかっ!?私も初耳でした!へ〜、そういうものがあるんですねvvv自分で好きな物が作れる
し、お金もそんなにかからなそうだから、高耶さんにとってピッタリな品物かもしれませんね。
携帯ストラップも色々あるけれど、愛が籠もった高耶さんからのプレゼントなら、直江も絶対嬉しいです
よね。お揃いなのがまたいいですvvv
真波さん、素敵な作品をありがとうございましたvvv
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