直江BD合わせお題「五月雨&五月晴れ」 by.京香


記念日というものは、どんな時でも快晴であって欲しいものだ。なぜなら、天気が
いいというだけで、朝から気分がいいからだ。
なのに。どうしてよりにもよって自分の誕生日に雨が降らなければならないのだろ
うか。しかも大雨といって過言ではないほどの雨量である。
高坂辺りに言わせれば、「日頃の行いが悪いからだろう」と返ってくる事だろう。
まあ、奴が直江(橘義明)の誕生日を知っているかどうかはわからないが。
とにかくも、朝から土砂降りという悪天候に直江のテンションも下がり気味だ。
これでは愛しの高耶と、外に出掛ける訳にもいかない。
(あの人は雨に弱いからな)
風邪でもひかせてしまったら大変である。
いや、看病をするのは大歓迎なのだが、熱に苦しむ高耶の顔は見たくないから。
(はぁ…。今日は家にいるしかないか)
窓辺に立って、雨にけぶる街並みを見下ろす。
容赦なくたたき付ける雨音が、直江の心を踏みにじっていた。


「ん? どうしたんだ? そんなトコに突っ立って」
「高耶さん」
高耶は起き抜けのまま、のそりとリビングに入ってくると、直江の前で盛大な欠伸
をした。
髪はボサボサ、パジャマはヨレヨレ。その隙間から、昨夜直江が付けた痕が見え
隠れしているのが何とも言えない。直江はそれとなく視線を外しながら、
「どうしたもこうしたも……。見て下さい。大雨ですよ」
苦々しく言うと、高耶がどれ、と窓の外を見た。そうして「うっわー」と呟くと、同情した
ような目をこちらに向けた。
「高耶さん……。そんな憐れみの目で見ないで下さい」
「いや、ていうか、ハハ……」
高耶は乾いた笑いをすると、直江の前を突っ切ってソファに腰を下ろした。そうして
リモコンでテレビを付けると、それで? と切り出した。
「雨降ってっから、そんなにテンション低いんだ?」
「それはそうですよ。これじゃあどこにも出掛けられないっ」
「別にいいじゃん。どこに行かなくても」
「しかし…」
今日は直江の誕生日ではあったが、それにかこつけて高耶と美味しいと評判の店
にでも行こうと思っていたのだ(もちろん会計は直江だ)。高耶に言ったら絶対反対
されると思って、当日まで内緒にしていたのだが。しかし、この大雨では、計画は
おじゃんと言える。高耶は出掛けたがらないだろうし、先にも述べたとおり、雨に当
たって風邪でもひかれたら大変だからだ。
別に、美味しい物が食べたいわけではない。
高耶と二人で、出掛ける事にこそ意義がある。そしてあわよくば高耶に喜んでもら
えれば、それこそが直江にとって最高のプレゼントになるのだ。それなのに…。
直江は恨めしそうに曇天を眺めた。そんな事しても、雨がやむ訳ではないのに。
窓辺に立ってため息を繰り返していると、高耶がふぅと軽く息を吐いた。
「……まぁ。いいんじゃねぇ?」
「なにがですっ」
すかさず、くわっと噛みつく直江に、高耶はボソボソと返した。
「…え? なんです?」
聞こえなくて問い返すと、高耶はすねたような顔をして言った。
「だからぁっ! 別にどっかに行かなくてもいいんじゃん! ここでお、お祝い……
すれば」
ボソボソと目を泳がせながら言う高耶に、直江は目をパチクリさせた。まさか高耶が
そんな事を言ってくれるとは思わなかったのだ。
「高耶さん……。お祝いしてくれるんですか?」
「ま、まぁな」
「嬉しいです!!」
感動して表情を崩す直江に、高耶は「なんだよっ」と言い放つと、
「言っとくけど! 大したモンはやれねーからな! 料理だって、凝ったモンは作れ
ねぇ!」
「はい!」
「期待なんかすんじゃねーぞ! 絶対!」
「はいv」
明らかに、語尾にハートマークを付けて返事をすると、高耶が呆れたような顔をした。
が、そんな細かいことは気にしない。
朝からの雨で気が滅入っていたが、こんな結果になるのなら五月雨も悪くない。
いや、五月晴れも五月雨も、高耶と一緒なら楽しいに違いない。

(高耶さん……)
照れた頬にキスをひとつ。

雨に濡れた誕生日は、今、始まったばかりだ。



なかなかやりたいお題が決まらなくて、時間だけをいたずらに消費してしまいました;;
ようやく書いてみたものの、こんな物しか書けず……。
それでも、直江誕生日おめでとう、なのです♪
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