「お月見」  BYリョウキチさん


空にまあるい月がひとつ。

「こう言うのも悪くないですね。」
「だろ?」

街灯に照らされた影が二つ。

「あ、直江。あそこ。」
「ん?」

何かを見つけて高耶が駆けてゆく。
楽しそうな後姿を見つめながら直江がゆっくりと後を追う。
だが、直江が追いつく前に高耶が少し息を切らせて戻ってきた。

「のんびり歩いてんなよ、おっさん。」
「追いかけて欲しかったですか?」
「ばーか。」


見上げた空に黄色い月。
高耶の左手にススキが一本。
直江の右手にススキが一本。と、コンビニの袋が一つ。
灯りの少ない道を二人で歩く。

「直江、だんご。」
「歩きながらですか?」
「せっかく月が出てんだ、食べなきゃ月に悪いだろう。」
「そんなもんですかねぇ。」
「そんなもんなの。」

コンビニの袋から買った団子を取り出す。
二人で一本ずつ。
食べながら歩く。

「オマエって月に似てる。」
「似てますか?」
「似てる・・いや、月を見てるとオマエを思い出すんだな。」
「じゃあ、高耶さんは毎日のように私の事を想ってくれてるんですね。」
「何でそうなるんだ。」
「私は、太陽を見ても月を見てもあなたを思い出しますよ。」
「オマエは何を見てようが関係ないんだろう。」
「わかりますか。」
「わかるよ。」
「ふふ。」
「何だよ。」
「分かるってことは、あなたも同じように想ってくれてるってコトですかね。」

高耶が立ち止まる。
直江も立ち止まる。
何と言葉を返したら良いものかと、困ったように高耶が直江を睨む。
赤い顔で困っている高耶が愛しくて、直江は高耶の頬にキスをした。

「なっ!ばっ!」

口付けられた頬を押さえて、ススキで反撃をする。
それを軽くかわして直江が笑う。

「お団子のタレがついてたんですよ、ココに。」

自分の頬を指さして、さらっと言ってのける。

「ふ・・っざけんな!ったく!」

怒った顔で、直江に一歩詰め寄る。
さすがにやりすぎたかと、直江が反省しかけたその時。
高耶の右手が直江の左手を捕らえた。
直江をひと睨みして。
そのまま引きずるようにずんずんと歩き出す。

「高耶さん・・・?」

呼びかけられて。
ぴたりと止まって振り返る。

「今は、これで我慢しとけ。」

一言だけ言って、またずんずんと歩き出す。
引きずられるように歩いていた直江が。
いつの間にか高耶の隣にいる。
嬉しそうな顔で高耶に問いかける。

「続きはお家に帰ってからですか?」
「ばか。」
「なんなら、人気のない場所にすぐ案内しましょうか?」
「調子に乗るな!」
「はいはい。」


空にはまあるい黄色いお月様。
ススキが二本。
右手に一本。左手に一本。
コンビニの袋が一つ。
街灯に照らされた人影が二つ。


真ん中でしっかりと繋がって。


一つになった影が二つ。


家の扉が閉じるまで。

繋がったままの影が。

ずっとずっと。

歩いている。





リョウキチさんから、こんなあまあまで、ほのぼので、ウフフな小説を頂きました〜!
十五夜掲載に間に合わなかったのですが、この季節にピッタリな、和やかノベルですねっ。
一つに繋がった影が、なんだかいいです♪
リョウキチさん、ありがとうございました〜vvv


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